++Happy Birthday to "Yu"++




「おめでとう」

にこりと微笑みを浮かべながら、親友は言った。

「おめでとう」

彼女はその手にブーケを抱いて。

「おめでとう」

上司は何だか分からないモノを。


いつも通りの朝、いつも通りに扉を開ければ眩しい光。
複数の破裂音と共に一瞬にして奪われた視界に呆然としていると、
あっという間に人並みに取り囲まれた。

「…何だよ、コレ」

髪に絡みついた色とりどりのカラーテープを指で巻き取り、見渡す周囲。
いつも通りの面子。見知った顔もいれば、未だ知らない顔もある。
その誰しもが笑顔を浮かべて、自分を見ていた。

「…ヤダ、まさか忘れたなんて言わないわよね…?」

色彩豊かな花をつけたブーケを差し出して、彼女は苦笑を浮かべて尋ねた。
可愛らしく咲き誇るその花は、彼女が数ヶ月前から育てていた物だったはず。
自分へ向けて差し出される様々な物を受け取っていくと、それは両腕から零れてしまいそうな程だった。


一体何事だろうかと、本気で考えあぐねていると、その様子を見ていた親友は笑った。

「えー…ユウ、本当に忘れてる?まさかそこまでバカとは思って無かったさー…」
「…うっせぇ黙れクソウサギが」

じろりと睨み付けてやると、ソイツはおどけた様な態度を見せた。


―…一体何だと言うんだ。俺は何かしたのか?
いや、そもそも昨日任務から戻ったばかりだというのに?
何かおめでたい事でもあったか?昨日?それとも今日?
…今日?今日は…


「…あ」

思い当たった節に思わず呆けた声を出すと、周りの奴等は盛大に笑い出す。
そうだった。任務やら何やらですっかり忘れていたけれど…。

「やーっと思い出したさ?」
「本当に忘れてるなんて思わなかったわ…まぁ、驚いてくれたのは嬉しいけど」



そう、今日は俺が、生れ落ちた日。



「…神田!」

はっとした声に振り返って見ると、そこには白髪の彼がいた。
小奇麗にまとめられた、花束と共に。

「誕生日、おめでとうございます」

ひらひらとした花弁をつけたそれは、どこか故郷の花に形がよく似ていた。
紫の花をつけるソレを思い出し、ふと懐かしさを覚える。

「どうぞ、受け取って下さい。アイリスの花です」
「アイリス…?」
「日本にも、似たような花があるでしょう?同じ種なんです。貴方に似合うと思って…」

細長い葉を持つソレは、受け取るとゆらゆらと花弁を揺らした。

「…花言葉と共に、貴方に捧げます」
「花言葉…?」

嬉しそうに笑うソイツの言葉に頭を悩ませていると、ふと肩へと手が置かれる。
それはコムイの手で、見上げた視線の先でニコニコと笑っていた。

「さぁ、それぐらいにして。行こうか?」

指差された先には、テーブルに並んだ料理の数々。
既に準備は整っていた。

「何…」
「パーティだ。さぁ、皆待ってるよ?」
「…今更、祝われても嬉しい年じゃない…」
「まぁそう言わずに。行きましょう神田…?」

背中を押され、やれやれと空けられた席へ着く。
それを確認すると、音頭を取ったのはラビで。
合わせて歌いだされた定番のフレーズに、そういえばこんな風に祝われるのは、
随分と久し振りの事だったと思い出す。

常に死と隣り合わせで生きている今。
長いようで短いような、一年という月日の中でたった一日。
たまにはこんな時間があるのも、案外悪いものでは無いかもしれない。


最後のフレーズが歌い終えられると、ふと頬が緩んだ。


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諸々の諸事情で一発書き、しかも掲載先はMEMOというギリギリなシロモノ。
何はともあれ永遠の18歳、神田さんお誕生日おめでとうございます(笑)
ちなみに6月6日の誕生花、アイリスの花言葉は「恋の使い」で、アイリスとは
桔梗とか菖蒲とか、その辺の花と同種らしいです…(花なんて知らん)(開き直るな)

お花に埋もれる神田とか書きたかったのになぁ…ただのバカンダではないですか…(痛)