++晩秋の夜に得るは、その―。++ 久々に嬢を書いたら、ス●ードワゴンも真っ青な程甘い。
※神田嬢です。
まだ夜は明けていなかった。
何時の間にまどろんでいたのか。冬の近づいた、チリリと刺すような部屋の寒さに、ふと意識が浮上して瞼を上げると暗闇にぼんやりと、その白い肢体が浮かび上がっていて。覚醒仕切らないまま、無意識に手を伸ばしてみるとその瞬間、ソレはくるりと視線を投げて寄越した。
「…神田?何してるの…」
「喉が渇いただけだ…起こしたか?」
「いえ、大丈夫…っていうか…ちょ、なんて格好してるんですか!!」
寝ぼけた頭をバサバサと振った。まじまじと見直してみても、間違いは無い。思わず一気に思考が覚醒するのも頷けた。
部屋の寒さも気にならないのだろうか。すらりとした長い手足を惜しげもなく晒して…否、彼女は一糸纏わぬ姿のまま、布切れ一つ身につけていなかった。
「何って、今更だろ」
「今更とかそーいう問題じゃ無くてですね!
あぁもう、兎に角シーツの一枚くらい羽織って下さいよ…」
慌ててベッドの上に飛び起きて、拍子で足元にぐちゃりと纏まったシーツを引き剥がす。
ほら、とシーツを差し出すと、彼女は渋々ベッドへと歩み寄る。
神田は一瞬、目を細めるようにしたけれど、差し出されたソレを受け取るつもりで細い腕がこちらに伸ばされた。
ただ、其れだけの仕草であるのに。どうしてかアレンは、その一動に目を奪われたのだ。暗闇に浮かび上がる白い肢体と、こちらに差し出されている細い腕。ぼやけたコントラストのせいなのだろうか。
彼女はまるで、救いの手を差し伸べる救世主、女神のようで、思わず息を呑む。まさに『神秘的』、というのに相応しい。
ある種、宗教画を見ているような感覚にも陥るのだが、例え世界中のどんな名手の画家であろうとも、
今この瞬間の美しさだけは、誰にも表せないだろうと、アレンは思っていた。
「…おい、離せよ」
そう言われて視線を落とすと、差し出したシーツの端を細い指先が掴んでいた。呆然としたまま手を離そうとしないアレンを、神田は不思議に思ったのだろう。布の端を摘んだままの指先を、そっと払い落とすと、意図が掴めない、と言うように神田は首を傾げる。その身をバサリと広げた真白な布で包む。シーツごと抱き寄せて、隣へ座るように誘導すると、大人しくされるがままになっていた。珍しく抵抗がないのを良い事に、今一度とばかりに、アレンは思い切りその身を抱きしめた。その途端に、彼女の全身が緊張するように強張るのが可愛らしくて、思わずクスリと笑みが零れる。
「…んだよ、何笑ってやがる」
「いえ、別に…。それより、ほらやっぱり。こんなに身体冷えてる…」
どれくらい、裸のまま佇んでいたのだろう。彼女の身体は、シーツ越しにも分かるほど冷え切っていた。抱き込んだままの腕で数回擦ってやると、こそばゆいのだろうか、モゾモゾと身を捩る。
「別に寒くはない」
「駄目だよ、風邪でもひいたらどうするの」
「そんなに柔だと思ってるのか?」
「でも、可能性はゼロじゃないでしょ」
「…お前に尤もな事を言われるのは癪だ」
本当に機嫌が悪くなったようで。
多分無意識なのだろうけれど、見慣れた眉間に皺がよるのが見えた。
「というかね、そうじゃなくてもシーツの一枚くらい羽織って下さい。僕だって寝起き早々、君のあんな艶かしい姿を見せ付けられて目のやり場に困らない程、神経図太くありませんから」
「ほう…意識の無い女を裸に引ん剥いたお前がよく言うぜ」
「…それ、初任務での事言ってるんですか?
だって、あれは君、怪我してたし。それにあの時はまだ…」
「俺が女だと知らなかった、ってか」
「まぁ、それもありますけど…」
「見た目で判断つかねぇ程、凹凸の無い体で悪かったな」
「そんな事言ってないじゃないですか。…っていうか、気にしてた?」
居心地が悪そうにしている顔を覗き込むと、不機嫌そのものを表したような視線とかち合った。
あまり、というか多分、他には誰も知る者はいないのだろうが。彼女は女を主張しようとしている訳ではないけれど、やはりそれなりに、コンプレックスではあるらしかった。
「気になんかしてねぇ」
「ふふ、大丈夫ですよ。
今のままでも十分、君は可愛らしくて柔らかくて…僕は好きですよ?」
「…そんなの、どうだって良い」
拗ねたような背中を、あやす様に規則的なリズムで2度叩くと、強張っていた身体から力が抜けていくのが分かる。そのまま珍しく、神田は猫のようにアレンの首筋へ頬を摺り寄せた。
思いがけない素直な反応に、思わず緩みそうになる頬と笑みを堪えながら、アレンは抱き寄せた身体ごとベッドへと倒れ込む。
「このままもう少し寝ましょうよ。夜明けにはまだ、時間あるから」
「ん…」
もぞもぞとシーツへ潜り込んで行く、小さな頭を撫でてやると、神田はうとうととしながら瞼を閉じた。
そうしてアレンが、暫らくシーツをかけ直したり撫で続けたりとしていると、規則的な寝息が聞こえ始める。
長い睫が影を落としている寝顔を、アレンは暫く眺め続けていた。
「…どうしよう僕、凄く幸せかもしれません」
ふとアレンが窓へ目を向けると、外気が相当冷え込んでいるのか、霜が下り始めていた。
部屋の中も薄寒い気がするけれど、腕の中にある温もりのお陰で凍える事はない。
月明かりに浮かぶ柔らかな頬へ口付けを落とすと、甘い香りが鼻腔をくすぐって心地よい眠気に襲われる。
目の前にある、安らかな寝顔をもう少しだけ見ていたいと思いながらも、気がつけば、アレンは意識を奪われて行くのだった―。
急にラブラブな二人が読みたくなった、という心境なのです…。
(…というか、とりあえずアレ神の二人が見たいんだ)(正直)
本誌での連載復活祈願。私待ってるよ!笑(これがかよ)(貴様)