乙女な神田はお嫌いですか(突然何)
それでも拒めないのは、何故。
++ DoLLs ++
「いつまでそうしているつもりですか」
冷たく吐き出された言葉は何故か、いつもこの胸に小さな傷をつける。
傷というにはあまりにも小さく、けれど確実に血を流すソコは止める術を知らぬまま、
会えば血を流すと分かっているのに、無意識に足はココへ向かってしまう、常。
抱かれる度に増してゆく、誤った認識。
今まで刃を振るう事でしか得られずにいた「存在理由」という物を、
求められる事で見出すようになった錯覚へ落ちてゆく。
頭では拒んでいるつもりなのにどうして、この身はあの存在を求めているのだろう。
それまで築いてきた己を壊される感覚に、気が付けば身を委ねてしまっていた。
「…処女じゃあるまいし、もう動けるでしょう?」
他人から受ける傷を恐れていた。
恐れていたはずなのに、傷つく事を厭わなくなってしまったのはいつからだろうか。
自らと同じ同性に抱かれ、本来ならば屈辱とも言える行為すら許してしまった。
挙句、その慣れの果てすら侮蔑されても、たいして抗う事も出来ず。
「…嫌なら来なければ良いのに。
貴方も物好きな人ですね…僕に抱かれるのがそんなに良いんですか?」
あろう事か、突き離される言葉を「苦しい」と感じてしまうなんて。
ありえない。そんな事ありえないのに。あってはならない事だと、決めたはずなのに。
「だったら…っ、呼ばなきゃいいだろうが!」
痛む身体を無理矢理に動かすのはせめてもの意地。
血を流して尚、屈服しかけている事実を認めたく無いから。
必死で余裕のある風を装っているというのに、
鈍痛に耐え切れず歪むこの顔を見て、満足気に細く笑むアイツが心底憎いと思った。
「嫌だな、僕一人の所為にするつもりですか?いつも言ってるでしょう。嫌なら来なければ良い。
そうすればこの関係は終わる。僕はココで待ってるだけ。…ココへ来るのは、貴方の意思じゃないんですか?」
アイツは、分かっているのだ。何もかも。
この関係に飲まれまいと無様に足掻く様も、もうすでにソレを諦めかけてしまっている事実にも。
何もかも分かった上で、試すように、態々傷を抉る様に問う。
何と憎らしい男だ事。
だが救えないのは、憎い、と思いつつも既に言葉にも出来ずにいる自分。
喉まで出掛かった言葉を飲み込んでしまうのは、あの時の事が脳裏を過ぎるから。
抱かれる最中は優しかった。
行為の後の冷たい態度とは裏腹に、人が変わったように、ただ優しさに溢れている一瞬。
痛いほどに、労わるような柔らかなあの手と、声と、顔と…言葉。
好きだ、と囁かれる言葉の、その真意を問う事が出来ぬまま、
いつもただ、差し伸べられたその手を、戸惑いながらも掴もうとする。
この手を振り切る為の刃は持っているはずなのに、そうしようとしないのは、紛れもない自身。
何を望んでいるのか。何を望まれているのか。
満たされているのか、満たされていないのか。
終わりを求めればすぐソコにある。けれど、まだココに居たいと願う心。
相反する意思の狭間で、踊らされているのは自分ただ一人。
糸を切ってしまえばいい
操り手を振り切って 逃げ出してしまえばいい
それでも どこか
糸を失して踊れなくなる事を恐れている
まるで鋼の糸で吊るされた 操り人形のよう
どうすれば、光さす扉は開くのだろう
繋がってはいないものの、Silk(前作)の対になるようなお話です。
元々オフ活動とかしたら書こうかなーと思っていた話でして、今回の短編を書くにあたり
所々ブチブチ切ったせいで補足を入れなきゃ分かり辛かろうと思います…(土下座)
何というか、アレンは神田自らが言葉にしてくれるのを待っているのですよ。
飴と鞭を使い分けながら(その辺は魔王たる故に察して下さい…え、無理?)(笑)
ちなみに最後の詩みたいな部分は、バンド活動を始めた頃にオリジナル曲を作ろうと
作詞したものの、初っ端から暗い曲書くな、と盛大にボツ食らったモノを若干弄ったモノです(遠い目)