凍りついたような瞳で僕を見上げる、その目が好きだった。



++ Silk ++



弱さを隠す人間程、その瞳は強い光を放つ。
何者にも侵される事無き、意思の強さ。
誰にも触れさせまいとする、拒絶の意思。
…彼も、そんな人間の一人だった。



一目見た時から、彼がその類の人なのだと気づいてしまった。



人は誰にも頼らず生きていけたらと願う反面、無意識に他人の温もりを求める生き物。
結局は独りでなんていられない、弱い生物。
孤独を願う人間程、他人へと堕ちた時には溺れてしまう。
過去に痛手を負った者ほど孤独を願い、他人を拒絶する。
彼も、その人だった。
引き離され、自らが傷つき打ちのめされる事を恐れている。
それならば初めから、誰とも触れ合わなければいいのだと、独りになる事を望む。
けれども、傷つく事を恐れていると言うことは、逆に言えば温もりによって得る安らぎを知っていると言うこと。
生まれながらに孤独を背負わされていた僕には、ソレがよく分かっていた。


表の顔を繕えど、僕の内面は荒みきってしまったのかもしれない。
他人の堕ちて行く様を見るのが好きだった。
特に彼のように、心も何もかもが綺麗で、優しい人間の場合は格別。
再び堕ちる恐怖に怯えながらも、反対に求めてしまう心との葛藤に揺れる様は
体中に震えが走るほど甘美なものだった。


あの鋭い視線を受けた時から、次は彼にしようと決めた。
この人が堕ちる様を見てみたい。不安に歪む顔はどんなものだろうか。
彼の全てを、この手で暴いてやりたかった。
想像するだけで体が震え、思わず笑みが零れたのを覚えている。
獲物を捕らえた蜘蛛のように、ジワジワと食らい尽くす快感。
羽ばたいて、羽ばたいて。


糸に足を囚われた蝶は、もう逃げられない。



足掻けば足掻くほど絡まる糸。この手に堕ちるまでもあと少し。
今は隣で、安らかな寝息を立てる彼に思わず笑みを零す。
薄く開いた柔らかな唇へそっと口付けて、魔法をかけるように呟いた。



さぁ早く 堕ちておいで


昔の雰囲気を混ぜて書いたもの。
今では阿呆な話ばっか書いてるので信じられないかもしれませんが、
以前はこんな、サイコチックに暗〜い話ばっか書いてましたよー…(痛い子!笑)
タイトルの「Silk」とは、蜘蛛の糸、という意味合いで。…確か(待てコラ)