※チーム・ティエドールですが、神田嬢です。
 ついでにネタがネタなのでどうもすみません(額を打ちつけながら土下座)
 何でも来い、な方はどうぞお召し上がり下さい。

 

 


マリの拳を避けた瞬間だった。
一瞬のうちに目の前が暗くなり、グラリと視界が歪んだのだ。
重力に逆らう事など出来る筈も無く、気づいた時には目の前に広がる、晴天の青空。


「…ってぇ…」


ドサリと音を立てて、頭から倒れこんだ。その拍子に舞い上がる、草花。
青々と茂った柔らかな芝生に受け止められた身体は、それ程の衝撃は受け無かったが、
思わず口をついて出た言葉に、型の相手をしていたマリや、傍観していたデイシャまでもが
顔を引きつらせているのが見える。

「おいおい、大丈夫かー?」
「す、すまないカンダ…」

青い視界を遮った二つの顔。
余りの快晴に、ぼんやりと空を見上げていた神田は、ふと我に返った。

「…これぐらい平気だ」

打ち付けた頭や身体を払いながら、神田は身を起こした。
その瞬間、再び襲われた眩暈に眉間を抑えると、マリは慌ててその身を支えるように腕を伸ばす。

「…っ、大丈夫だっつってんだろ!!」

支えられたマリの腕を、身を捩って振り払う。
まるで猫の身震いの様な仕草に、その様子を見ていたデイシャが苦笑を浮かべながら肩を震わせた。

「カンダ、具合が良くないなら休んでいても良いぞ…?」
「そうそう、顔色も良くないじゃん?…くくっあははは…っ」
「…何がおかしい笑うな!!」

デイシャに笑われた事を受けてか、神田は耳まで赤くしながら怒鳴った。
ムキになってヒステリーを起こす彼女を、兄弟子達は各々の反応で見守る。
デイシャは、妹弟子がヒスを起こす様子をさも可笑しいとばかり、逆に煽る様に笑った。
マリは彼女の身を案じつつも、煽られ更に熱を上げる一方の癇癪を静めるのに困惑している。

「あぁもう五月蝿いっ!!放っとけっつってんだろ!!」
「またまた、そんなイライラしちゃってー。あぁあれ?アノ日?」
「…っ!!」

キヒヒ、と嫌な笑いを浮かべながらデイシャはからかったつもりだったが、
それはどうやら図星をついたようで…。
神田は今にも斬りかかりそうな勢いで、更に怒鳴り散らす。
傍観していたマリは胃の痛むような思いで、少し離れた場所で絵描きに没頭する師匠へと、
助けを求める視線を投げてみる。が、当の彼は此方の視線に気がつくと、ニコリと笑顔を見せるだけ。
そんなマリの心中を知らずしてか、デイシャの悪乗りは更に続いた。

「あれぇ!図星?オイラ当てちゃった?そりゃ大変だねぇ…」
「…いい加減にしねぇと斬るぞ!!」
「うわ、止め…っ!!」

掴み掛かられ、デイシャの身体がガクガクと揺さぶられると、
それに合わせてチリチリとなるイノセンス。
半ば目を回しかけている彼を見かねて、仲裁に入ろうとしたマリの肩に、
背後から手が置かれたのはその時だった。





「こら、二人共もう止めなさい」

いつの間に移動していたのだろうか。
微塵の気配無く、現役エクソシストの背後を取れるあたりは流石、元帥であるだけはあるか。
声をかけたのは、彼らの師であるティエドールだった。

「オッサン!カンダの奴が酷ぇんだぜー…」
「うるさい!お前がしつこいからだろーが…!!」
「まぁ落ち着きなさい。神田、デイシャもお前を心配しての事なのだから…」
「そーそー。心配してやってるだけじゃん?」
「デイシャ、お前も昔から悪乗りし過ぎる所はいけないよ」
「…心配なんて余計なお世話だ」
「こら、神田」
「…チッ」

年に似合わず屈託のない笑顔で窘められ、それまで言い争っていた二人は拗ねた様に押し黙る。
まるで叱られた子供の様な二人に、マリは思わず笑みを零した。

「さぁ、もうお仕舞いにしよう。天気の良い日だ、エクソシストと言えど、たまには休息も必要だろう?」

ふわふわと柔らかな髪を風に靡かせながら、ティエドールは弟子たちに背を向ける。
また絵でも描き始めるのか、ボードを片手に歩き出した彼は、その数歩先でふと足を止めた。

「それにしても…神田ももうそんな年だったかね?」
「…は?」

しみじみと哀愁を漂わせつつも呟かれた言葉に、残された弟子達はその意を図りかねていた。
訳が判らない、という風に顔を見合わせる彼らを振り返り、ティエドールは遠い目をしながら答える。

「…まぁ、なんだね…」





「孫の顔は、早く見るに越したことはないぞ?」





ニコニコとそう言うなり、彼は飄々と元いた場所へ戻ると腰を下ろし、さもご機嫌とばかりに筆を取る。
瞬時にその言葉の意味を理解した兄弟子達は苦笑を浮かべながら、
未だ固まったままの妹弟子の様子を伺い、顔を見合わせた。

「あのオッサン、話聞いてたんだぁ…」
「…地獄耳というか何というか…あの人には適わんな…」
「おぉーい、カンダー?」

デイシャがひらひらと眼前で手を振ってみると、彼女はようやく思考を取り戻したらしい。
跳ねるように顔を上げると、ようやく言葉の意味を理解したのか、みるみるうちに顔を赤くする。
同時に、わなわなと震え始めたその手が、傍らの六幻へとかけられた。

「あ、コレやべぇじゃん?落ち着けカンダ。な?」
「神田、その…師も悪気があったわけではないのだろうから…」

―――このままでは確実に殺られる。
そんな確信を持つ程の殺気を放ちながら、兄弟子たちの宥めも虚しく神田はゆらりと六幻を構えた。

「…あの…クソオヤジがぁーーーーーっ!!!」

今にも飛び掛って行きそうな神田を、デイシャとマリは慌てて取り押さえようとする。

「ストップ!ストップカンダそれだけはマズイって!!」
「うっせぇ離せ!!」
「弟子が元帥殺しなど笑えんぞ?デイシャ、離すなよ」
「あのオヤジ葬ってやる!俺の気が済まん!!」









「なんとまぁ、仲の良い子達だろうねぇ…」

遠くで響く弟子達の喧騒を眺めながら、ティエドールは満足気に微笑んだ。
惨劇の理由が自分であるという事を知ってか知らずか。
彼は可愛い愛弟子達をデッサンに収めるべく、快調に手中の筆を走らせたのだった。



晴天の青空の下、一時の平和を切り取る為に。


ちょっと前に拍手コメントで、「ティエチームで嬢、紅一点」
というリクを頂いたのでやってみたのですが…コレ、紅一点?(笑)(聞くな)
お気に召しましたらどうぞ、リクして下さった方に謙譲致します。
なんだかこれじゃあ「父子家庭の末妹」みたいですが…(苦笑)
神田が元帥嫌いなのは、「お父さんなんて大っ嫌い!」っていう思春期のアレなんですきっと(笑)

仲良しなチーム・ティエドールが大好きです(突然何)

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