++真夏の夜の夢++ 熱帯夜に負けてぽちぽち携帯に打ち込んでた物デス。
殆ど朧気に覚えている故郷の気候。
四季折々、春暖かく、夏は暑い。秋は過ごしやすく、冬は寒い。
もうココへ来て随分と経つ自分の身体は、幼き日に確かに感じていたあの季節を、
ただ暑い、寒いという言葉としてでしか、思い出すことは出来なくなっていた。
ふと、寝苦しくて目が覚めた。
瞼を上げると部屋は暗く、それがまだ夜の闇に包まれている刻である事を教えている。
身体を起こすのも億劫で、わずかに首だけを動かして、周囲を確認するように見回す。
昨晩、といっても数時間前の事でしかないのだが、行為の直後に半ば失神するように意識を無くしたせいか、
身に纏うものは何もなかった。普段なら、とっくに汗も引いている頃だというのに、
未だ裸の背中へ張り付くようなシーツの感触。
加えて、ふと自分の首元を見ればまるで蛇のように、一房の髪が絡みついている。
べったりと張り付くような不快感に、ソレを引き剥がすように払うと、しっとり濡れて重みを携えた髪は
逆らうことなくシーツへと落ちた。
「…暑…」
誰に言うでもなくそう呟くと、ぼんやりと纏わりつく不快感を振り払うように、意を決して身を起こす。
汗に濡れていた背中が、外気に触れて心地よかった。
英国の気候は、故郷と差ほど大差無いにせよ、気持ちの上でいくらか涼しかったようにも記憶している。
特に本部のあるこの場所は高度のある土地柄、日中こそそれなりな気温まで上昇すれど、夜になれば過ごし易い。
暑い、と言っても湿気の少ない国であるから、それなりにやり過ごせる程度だったというのに。
何をする気も起きなくて、ただ気だるげな暑さにぼぅっとする、
濃霧のような意識を覚醒させる事もなく、ぼんやりと部屋を見回した。
ふと隣を見れば、数刻前とは打って変わって、子供らしい無邪気な寝顔が転がっている。
子供らしい、とはいっても、実際まだ15程の年なのだから当たり前か、とも思う。
赤黒い片腕をこちら側に投げ出して、すやすやと安らかな寝息を立てているその様を眺めていると、
半ば八つ当たりとも知れぬ不満がふつふつとこみ上げてきた。
「…随分スッキリした顔で寝こけやがって…こちとらお前のせいで目が覚めちまったってのに…」
別段控えた訳でもない声音にすら、ぴくりとも応じない。
盛大にスプリングを軋ませながらその顔を覗き込んでみても、
ただ眠る呼吸に合わせて長めの睫が震えるだけだった。
普段は自分の言動に一喜一憂する癖に、と今は反応を示そうとすらしないソレに舌を打つ。
「…阿呆面…」
少し開かれた口元から、今に涎でも垂れてきそうな程熟睡している。
先の余韻とも、寝汗とも知れぬ不快感を覚える自分とは、対照的過ぎる幸せそうな寝顔が面白くなくて、
さらりと覗いた、その小さな額目掛けてぺちりと指先を叩き付けてみた。
「…うぅ…んー……」
「…チッ、面白くねぇな…」
叩かれても、僅かに眉間を歪ませ小さく唸るだけで、またすぐに深い所へと誘われているらしい。
何かを探すように、もぞもぞと赤い腕がシーツの上を弄っている。
その手に指先を差し出してみると、まるで目的のものを見つけたかのように握り返してきた。
そのまま身動きが治まり、また規則的な寝息が響き始める。
触れた指先が、ひんやりと冷たくて心地よかった。
しばらく寝顔を眺めていたものの、身体は休息を欲しているようだった。
ふわふわとした眠気が、ようやく降りてきたと思ったその時、ふと思い立つ。
なるほど、これなら眠れるかもしれない。
汗も引いた身体を早々に横たえると、もぞもぞとシーツへ潜り込む。
繋がれた指先を一旦解いて、投げ出されたままのその腕を掻き抱くように握り締め、頬を摺り寄せた。
ひやりとした硬質の肌が、心地よい眠りをより深いものへと変えていく。
「これぐらい、許せよな…」
途端に重くなった瞼が閉じる瞬間、
クスリと笑うような吐息が聞こえた気がした…。
髪が長いと首に絡みつくあの感覚。アレは相当うざったいですよねぇ…(苦笑)
果たしてアレン様は起きていたのでしょうか。
アレン様なら狸寝入りしながら擦り寄ってくる神田を「可愛いなぁ…v」とか悦に浸ってそうですケド(笑)
ちなみに私の場合、熱帯夜のお供、
アレン様の腕の代用品はアイスノンです…(寂しいなぁおい)