※まず盛大に謝罪を申し上げなくてはなりません。(ま た か !)
捏造も捏造なお話です。時間軸も時代もまったくどこだかわかりません(笑顔)
某さまへ捧げる、アニタさんと神田少年をむりやり繋げちゃおうな文です。
…いいですか?(笑)




ではどうぞ










++我最愛的弟弟++






「…まだ生きてやがったのか、阿婆擦れ女」


顔を覗かせるなりそう声を発したのは、まだ少年とも青年とも言えぬ年頃の男だった。
優男風な外見に似合わず、皮肉ったように口角を上げて笑う姿を真っ向から見据え返したのは、
この巷でも指折り有名な戯楼の店主、アニタ。金襴な衣装の裾でそっと口元を隠す彼女は、数年ぶりだと言うのに、まるで変わらぬ様子の彼を見て、思わず失笑した。




「貴方様こそ、ご無事なようで何より…。大きくなられましたね」

零れる笑みを隠しながら、袖を合わせて頭を垂れ…客人を迎えるかのような彼女の態度を、彼、神田は胸糞が悪いと言った風に睨んだ。射抜くような視線でソレを感じ取ったアニタは、いよいよ可笑しくてたまらないといった風にクスリクスリと息を零す。

「おい、その喋り止めろ。気味が悪くて反吐が出そうだ。俺は客じゃねぇ」
「……。まぁ、可愛くないのね。幾つになってもあの頃のままだわ」

馴染みの口調へ変化した事に安堵しつつも、彼女の浮かべる不適な笑みと言葉に、
神田は居心地が悪そうに眉を寄せる。

「うるせぇ。俺は変わった」
「いいえ、何も変わってないわ。その生意気な所も仕草も。ここへ来た頃のままよ」
「…はっ、てめぇに言われたかないね」

即答、とはまさに文字通り。
瞬速で返される言葉に、やはりこの女は苦手だと、彼は苦虫を噛み潰す思いだった。





アニタと初めて顔を合わせたのは、今からもう十数年も前の事。
初めて故郷の国を離れ、異国の地へと足を下ろした、その時。イノセンスの適合者である神田に、初めて接触した教団の関係者が、この戯楼からの使者であったのだ。当時、まだ幼過ぎるほどの子供だった彼を、修行の為とはいえ全く異なる文化の、異国の地へと突然放り込む事は多少なりとも支障があるのでは、と判断された為だろう。中国は、彼の故郷である日本から海を隔てた隣の国であるが、東洋の地でありながら教団のサポーターとして仕える一族がいる。それが、アニタの一族であった。教団は当時まだ彼女の母親が店主を勤めていた天青楼へ、神田を預けたのだ。言語、文化、教団理念のすべてに於ける初歩的な教育を受けさせる為に。そして幾分年が近い事もあり、彼の教育係兼、世話役を任せられたのが、店主の娘であったアニタであるのだが。



神田は、初めて顔を合わせた時から彼女が苦手だった。
戯楼の馴染みへと向けられる顔こそ、穏やかな良くできた娘の顔であったが、彼女も当時は10代の年頃な少女である。加えて、戯楼とはいえ商売家系な血筋。裏を返した等身大な彼女の性格は、極めて活発な少女の姿であったのだ。アニタにしてみれば、一時的とはいえ、年の離れた弟でも出来たようで、その指導にもつい熱が入ってしまう所であったのだが、神田にしてみれば年上とはいえ、『女の指導を受ける』いう事が彼の幼くして高すぎるプライドの癪に障ったのかもしれない。結局、彼が教団へ旅立つまでのほぼ一年の間、事ある毎に突っかかって見るものの、女の口上手は天下一品、とばかりに彼は惨敗を期していたのである。





そしてそれは、数年の時を隔てて尚、健在であるらしく。





「でもそうねぇ。少しは変わったのかもしれないわ」

暫くの沈黙を破ったのは彼女だった。ふと視線を合わせると、言い包められていたあの頃のように、美しくも不適な笑みを浮かべる彼女に、神田は嫌な予感がした。

「ほぅ…何が変わったって?」
「…例えば、あの頃のように、泣かなくなった所かしら。それとも、今も泣く事がある?」
「俺は泣いてなんかねぇ…っ!!」
「あら、そうかしら?」

『あの頃』を思い浮かべるように、アニタの視線は宙を見上げた。
記憶を手繰り寄せるように視線を彷徨わせる彼女は、まるであの少女の頃のように、
意地悪くも楽しそうに、クスクスと笑みを浮かべている。

「夜な夜な故郷が恋しくて泣いていた、小さな坊やは誰だったかしら…ねぇ、ユウ?」
「…っ、てめぇ覗いて…っ!!」
「可愛い義弟(おとうと)が寂しがってるんですもの、気にもなるわ。枕に縋り付く貴方はそれはそれは…」
「誰が義弟だ、誰が!」
「あら、私にとって貴方は今も昔も変わらず、友であり、可愛い義弟に違いないのよ」

嫌な予感は的中したとばかりに、神田は頭を抱えた。自分ですら忘れてしまっていた記憶を、彼女はいとも簡単に手繰り寄せる。苦手な彼女の『あの』笑顔が煌いて見えた。

「…相変わらず食えねぇ野郎だぜ…」
「失礼ね、私は女よ」
「揚げ足とりも健在だな!」

吐き捨てるようにそう言うと、神田は真っ赤に俯きながら、釈然としない気持ちをぶつけるように、絨毯敷きの床へと乱暴に座り込む。そんな彼の様子を眺めて、やっぱり変わってないのね、と今度は隠す事なくアニタは笑った。



「ねぇユウ。直ぐにココを立たねばならないのでしょう?ほんの少しの時間でも、こうして顔を見せてくれたって事は、貴方も私と同じ想いだと、少しは信じてもいいのかしら」



ふと真剣な眼差しを感じて、神田は彼女を見返した。
コロコロと表情の変わる人間の意図を読むのは苦手だが、それを差し置いても、彼女の思考を読むのは難しい。

「…何が」
「私はね、貴方にも私と同じであって欲しいと思うの。時は大分過ぎてしまったけれど、今も昔も、貴方にとって私が義姉、もしくはそれ同等の存在で有れたら、とても幸せよ」
「……どうだかな。人の心理を読むのはお得意だろ。読んでみろよ」

アニタは、憎まれ口ばかり叩く彼の性格を、痛いほどよく知っている。
素直じゃない所、自ら肯定する事が出来ない所。彼の何がそうさせるのかは知らないが、
今のように、視線を合わせられない時が何を意味するのかも、彼女はよく知っていた。
拗ねた子供のようだと思いながらも、あの頃の彼がここにいるようだと、彼女はまた笑った。

「…素直じゃない子ね。そんなんじゃ、お友達も出来ないわよ」

そんなものはいらない、と悪態をつく彼であるが、その顔色がパタパタと変わる様子に、どうやら良い友と呼べる存在がいるらしいと、彼女は察知していた。良かったわ、と声をかければ、彼は益々、居心地が悪そうに身じろぎをするのだけれど。




急に廊下が騒がしくなった。
それと共に、アニタの部屋へと、探索部隊であろう人の声がかけられる。

「…じゃあな。俺は行く」
「ユウ。一つ、お願いがあるのよ…。どうか、無事でありますよう。大切な義弟へ、私からの願いよ」
「…お前に頼まれなくとも、俺は死なない。じゃあな」

にこりと微笑みかける彼女を見ようともせず、彼は立ち上がって言った。
それもまた、彼なりの意思表示なのだろうと、彼女は思う。ふと見上げた先に、黒い裾を翻して向けられた背中がある。それは昔、教団へと旅立つ幼い彼を見送った時よりも広く、大きなものだった。何時の間に、こんなに逞しく成長してしまったのだろう。愛しいその背に寂しさを感じつつ、誇らしくもある。
アニタは『あの頃』と同じ、複雑な心持で見送り、それでも丁寧に頭を下げて微笑んだ。





「いってらっしゃいませ、エクソシスト様」


ガツンゴツンガツン…(地面に額を叩き付ける音)
えーと、生きてますか皆様…(笑)
某さんとイタリアへ逃亡前にメッセした時の頼まれ物です。Nさん、どうぞ(返品不可)

アニタ嬢と神田少年の関係を無理くり作っちゃおうぜな文ですが、
私、これなら食えます…(皆さん食えますか?笑)
カプは駄目なんですが…義姉弟みたいな関係なら可愛いなぁと。
お姉ちゃんには頭上がらない、というか相手にもならない神田少年に愛。
タイトルはそのまま、字のイメージで感じ取って下さい。読めなくて良し。
(ただ中国語使いたかっただけだから…!字面的に!笑)